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「相田さんって、食えない女だよな」 ミーティングも、その後のキムチ鍋パーティーも終わり皆が帰った後、二人並んで洗い物をしていると、氷室がふと呟いた。 「は?何だそれ」 火神が食器の汚れをざっと湯で流し、氷室がそれを食洗機に並べていく。 「したたかだ、ってこと」 「うーん・・そうか?」 「誠凛の話、一切しなかったぞ。誰かがじゃあウチは・・って言うと、それは後で説明するけど、とか明日話すわ、とか」 「当たり前だろそんなの。陽泉とはIHでまた当たるかもしんねーのに」 「上手く落としたと思ったのになー」 「・・ったく何やってんだよ。ウチのカントクなめると痛い目に遭うぞ」 「うん、まぁ、わかってたけどね、ウチの監督も女だから」 「そーいやそうだな」 「女の方が私情を挟まないことに長けてるんだよ、きっと」 「そうかもしれないな・・」
およそ3ヶ月前、自分たちが対戦した際の私情入りまくりの試合を思い出し、少し恥ずかしくなって、二人は共に苦笑した。あの試合の後、わだかまりのあった自分たちの関係にケリを付けた。そうしたら、それまで忘れていた想いが溢れれ出し、お互いに堪らなくなって、今の関係に行き着いた。 東京と秋田という遠距離恋愛。セックスだってまだ片手の指で足りるほどしかしていない。だから会えたときには、恥ずかしくなるくらいにお互いを求めるのだ。
食洗機のスイッチをONにして、火神は無言でキッチンカウンターからリビングへと移動した。壁沿いに置かれた電話ラックの引き出しから何かを取り出したかと思うと、すぐにまた戻って来て、握った手を氷室に向けて差し出す。 「やるよ」 「・・何?」 出した手のひらに乗せられたのは、鍵だった。 「え?これって・・」 「さっき、日向先輩に返してもらった」 「いや、でも・・」 「黒子に合鍵渡したと思ったからあんなことしたんだろ?」 「え?っと・・・・・・ごめん」 「だから、やるよ」 「でもオレ、ここに来れること滅多にないし。誠凛の人たちが持ってた方が便利じゃないのか」 「べつに使わなくてもいい」 「え?」 「オレがタツヤに持ってて欲しいと思っただけだから」 「・・・・・」 「持ってろよ」 「・・・うん」 氷室は渡された鍵を強く握り締めた。 「でも絶対失くすなよ?マンションの合鍵って、作るの超めんどいらしいから」 「そうなんだ?」 「それにここ、親父の名義だし」 「おじさん騙してるみたいで心苦しいな」 「じゃあ返せよ」 「え?イヤだよ」 これ以上もう意味のない会話に、二人は肩を揺らしてくすくすと笑い出す。 「タイガ・・」 「ん?」 「愛してる」 「え・・っ、あ・・オ、オレも・・・」
日本語であらためて言うとひどく恥ずかしい言葉に照れ合いながら、二人はカウンター越しに、甘い口付けを交わした。
おしまい
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