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ほんの少しの愛撫で、氷室のペニスは元通りに再生した。硬く、大きく天井を向く。黄瀬自身のそれも同様であったが、一夜限りの関係であるが故に、このまま挿入して終わりというのも味気ない。どうしようかなと見下ろした氷室は切なげにこちらを見上げている。早くどうにかして欲しいのだろう。滅茶苦茶にしたいという欲望が、黄瀬の胸に再燃する。

「今、イかせてあげるからね」

黄瀬は仰向けに横たわる氷室の足を開かせて、その間に割って入った。ボトルの蓋を開けてローションを手のひらに垂らし、一方の指先にそれを塗り込めると、氷室の尻に指先を宛がい、ゆっくりと侵入させる。ついさっき風呂でお互いの中を掻き乱した間柄だ。氷室はそれを挿入前の準備と受け止めて、素直に受け入れた。黄瀬は中を窺うように、いちばん長い中指を上に向けて、くい、くい、と壁を擦る。手前に、奥に、と指を移動させながら繰り返しているうちに、氷室の体がビクンと大きく跳ねた。

「え……っ、やっ、あ、あぁ……っ」

ここか、と心の中で呟いた黄瀬は、その一点を執拗に指先で掻く。

「黄瀬君……っ、ダメだ……や、ん……っ」

ダメでもイヤでもないくせに。黄瀬は氷室を見下ろしながら、卑屈な笑みを浮かべる。両手で顔を覆う氷室の右手を掴み、黄瀬はその手を氷室のペニスに触れされた。それ以上何もしないし言いもしなかったが、氷室はその手で自身を握り、扱き始めた。黄瀬の肩が、くっく、と揺れる。

「ハッ……あ、あ、んん……っ」

腹の上に、生温かい精液が飛んでは落ちる。黄瀬の指による前立腺への刺激と己のマスターベーションによって、氷室は射精した。ハァ、ハァ、と体全体で息をする氷室は黄瀬を見上げて満足げに微笑んだが、氷室の尻から黄瀬の指が抜かれることはなかった。

「まだ、イけるっスよ?」

たった今、射精したばかりの氷室の中を黄瀬の指先が弄る。

「え、ちょっと待って、オレ、もう……」

言いかけた氷室の腰がビクンと大きく浮いた。

「やっ、あ……ウソ……っ」

黄瀬の指先は、再度氷室の敏感な部分を掻き始めた。だって、今イったばかりで、そんなに溜まっていたわけでもないはずなのに、どうして―――?
氷室のペニスは、容易に反応を示し始めた。

「どう……しよ……っ」

「どうっスか?」

「気……持ち、いい……っ」

フッと黄瀬が笑う。心の中では、笑いが止まらない。火神はおそらく、極シンプルなセックスしかしていないのだろう。何に対するものかよくわからない優越感を得た黄瀬は、さらにこの男をどうにかしたい衝動に駆られた。

「もっと、気持ちよくなるっスよ」

さっきは自身を握らせた氷室の右手を掴み、黄瀬はその手を氷室の胸へと移動させた。不安げに見上げてくる氷室にふと微笑んで、黄瀬はさらに左手も氷室の胸の上に置いた。

「自分で、いじってみて?」

「え……でも……」

「メッチャ気持ちいいっスよ?」

「…………」

黄瀬の言葉に誘われるように、氷室は恐る恐る、両手の指先で自身の乳首の先を摘まんだ。

「ハッ……あ、やぁっ……っ」

経験したことのない刺激に、氷室は腰を浮かせて仰け反った。黄瀬の指先が尻の中のいちばん敏感な部分を擦り、己の手で乳首の先端を摘まめば、その度に言い様のない快感が全身へと広がる。達したばかりの氷室のペニスは瞬く間に硬くなっていく。

「氷室さん、天井見て?」

「……っ」

薄く目を開いた先には、尻の中を弄られ、自ら乳首を摘まむ行為により大きく勃起しているあられもない自分の姿が映った。

「う、そだ……や、あ、あ、もう……っ」

一度目ほどの勢いはなかったが、亀頭の割れ目から、精液がぽたりぽたりと滴り落ちる。氷室は短時間のうちに、二度目のオーガズムを迎えた。

ひくひくと余韻に体を震わせる氷室を黄瀬が見下ろす。黄瀬のペニスもとうに大きく上を向いている。挿れる側に立つのは一体いつ以来だろうか。高校生の頃、モデルの女の子とヤって以来だろうか。もちろん青峰と付き合ってからはそんなことは皆無で、男の尻に挿れるのはこれが初めてであったが、抵抗は微塵もなかった。

「挿れても、いい?」

黄瀬が問うと、氷室は寧ろ早くと催促するかのように何度も頷いた。枕元に伸び上がり、ホテルに常備されているコンドームを手にして封を切り、性急にペニスに被せる。

「前からと後ろから、どっちがイイっスか?」

氷室は少し考えてから、後ろ、と答えた。目を開いたときに天井の鏡に痴態が映ることを避けたのだ。

「じゃあ、向こう向いて」

と、黄瀬は氷室の腰を掴んで捻った。氷室は素直に起き上がり、四つん這いになって、黄瀬に尻を突き出した。散々弄られた入口は、黄瀬のペニスの侵入と共に大きく開き、それを容易に飲み込んだ。

「う……ゎ、氷室さんのここ、メッチャやばい……」

容易に入ったものの、それでもやはり狭い入口の締め付けに、黄瀬の口から声が洩れる。ゆっくりと腰を動かすと、今度は氷室の口から声が洩れる。黄瀬は、動きを止めた。
暫く待っても黄瀬は動かない。それが意地悪だとわかっているけれど、自分から乞うことへの羞恥心はいくらかあって、氷室は枕に顔を突っ伏して、びくびくと震える体を抑え込んだ。

「我慢しないで、動きなよ」

ゆるゆると亀頭が入口に掛かるあたりまで引き抜いて、それから一気に腰を打ち付ける。

「!!……ん、む……ぅぅ……っ」

突っ伏した枕の中からくぐもった叫びが聞こえる。黄瀬は再び、動きを止めた。じれったくて、じれったくて、もっと、欲しくて。
両肘を突いて、のろのろと枕から顔を上げる。氷室は自ら、突き出した尻を前後に動かし始めた。

「ん……ぅ、ぁ……っ」

黄瀬は氷室の腰を掴んで支えているだけで、動かない。ゆっくりと前後する氷室の尻の動きが、次第に速くなる。

「は……っあ、ん、んぁ……っ」

抑えることのできなくなった喘ぎは、氷室の目の前に立て掛けられたスマートフォンにもしっかりと届いていることだろう。自ら腰を振るその姿は、天井の鏡に映った映像としてカメラに収められていることだろう。

「氷室さん、あんた……ほんっとイヤらしい人だったんスね」

くつくつと笑いを堪える黄瀬の言葉に、違う、と首を横に振りながらも、動きを止めることができない。夢中で腰を振り始めた氷室は、絶え間なく声を上げ続けた。





鏡よ鏡―――。

ふと天井を見上げれば、そこに映るのは、友人の恋人を玩んで優越感に浸る、醜い顔。



「最低っスね」



小さな声で呟いて。
黄瀬は天井の鏡に向けて、ピースサインをして見せた。








 

 

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