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「で?次はオレが手でしてやればいいのか?」

というかせめてこれは拭かせてくれよ、とどこか投げやりに言いながら体を起こそうとする氷室の胸を小林はドンと突いた。起こしかけた上半身が、背中からベッドに落ちる。

「・・・おい」

「そのままにしとけよ、エロいから」

「お前に・・そんなこと言われたくない」

「紫原が言ってくれるからいい、ってか?」

「・・・・・・」

睨むような視線を向けた氷室が再度体を起こそうとするより早く、小林は氷室の体を強引に横向きにした。放った精液が腹を伝って流れ落ち、シーツを濡らす。

「何やって・・っ」

「ホントに入ってやんの」

「黙れ・・」

あまりにも惨めな格好に耐え兼ねて、氷室は尻に入ったままのローターを自らの手で抜こうとしたが、その手を小林が掴んだ。反対の手で小林は、氷室の尻にかかるローターのストッパー部分に手をかける。

「やめてくれ・・っ」

恥辱に堪え切れず、氷室は懇願した。小林は無表情で氷室を見下ろし、ローターをゆっくりと引き出す。

「・・く・・っ」

氷室の顔が歪む。歯を食いしばるのは屈辱からか、それとも快感を堪えているのか。少し引き出したローターを再び氷室の尻に埋め込むと、氷室は大きく息を吐いた。もう一度引き出そうとすると、氷室はまた、顔を歪める。その様に小林はほくそ笑み、ゆっくりと出し入れを繰り返した。

「・・あ・・あぁ・・・」

必死で堪えていた氷室の口から声が洩れる。小林は満足げに笑い、ローターを一気に引き抜いた。

「・・あぁ・・っ」

放られて床に落ちたローターは、まるで生き物のようにうねうねと不規則な動きを見せる。それをちらと目にした小林は、その生々しさに興奮を抑えきれない。横向きの氷室の足を持って開き上を向かせると、開いた両足をがっしりと抱えた。氷室の顔がサッと青ざめる。

「待て小林!それは・・っ」

「なぁ氷室・・挿れていいか?」

「い・・いいわけないだろう!!」

小林はすでに自身のペニスを氷室の尻に宛がっている。

「ゴムも付けないで・・オレも、お前もどうなっても知らないぞ!!」

男同士のセックスのリスクぐらい同性愛者でなくとも知っているはずだ。脅しではなく、氷室は恐怖に慄いた表情で小林を見上げる。

「だったら出せよ」

「・・え?」

「ゴムだよ。机の引き出しかどっかに入ってんだろ?」

「あるけど・・無理だ」

「何が」

「アツシサイズしかないぞ・・」

「!!・・・ふっざけやがって」

余計なことを言ったと後悔したが、もう遅い。小林は逆上して氷室の足を抱え上げる。終わりだ・・と目を閉じたが、小林は抱え上げた足を下ろした。

「・・?」

「なーんてな」

小林の惚けた声に、目を開けた。にやりと笑うその顔に、氷室は眉を顰める。

「紫原のモノと比べられて腹立てるヤツなんかいねーよ」

実際見たことねーけど、と言いながら小林はいったん閉じた氷室の両足を片腕で抱え、ジャージのポケットを探った。ポケットから取り出されたのは、コンドームだった。彼女と使うつもりで手に入れていたのであろうそれを袋から出し、自由な片手と氷室の足を抱えたままのもう一方の手で、自身のペニスに被せていく。

「お前・・最初からそのつもりで・・・」

「んなことねーよ?あわよくば、とは思ってたけど。まさかホントにヤれるとはな」

「まだ・・ヤってない」

「いい加減諦めろ、な?」

もうどうでもいいという思いと、そこだけは守りたいという思いが混在する。抵抗する力も残っていない。小林は再び氷室の足を広げ、抱え上げた。

「…Shit!

そう吐き捨てて、氷室は両手で顔を覆う。

「向こうのヤツってマジでそう言うんだな」

小林は小さく笑いながら、氷室の尻に宛がったペニスを挿し入れた。自身の昂りをどこかに挿れるという行為自体初めてだというのに、硬いそれは難なく奥へと入ってゆく。紫原にローションで慣らされていた上に、ローターがずっと回っていたからだろう。ああそうだ、もうどれくらい時間が経ったのかわからないが、さっきまで紫原にここを弄られていたというのに。全部入ったのか、小林は、はぁ・・と満足げな声を洩らした。

「すっげぇな・・キツいけど、気持ちいい・・」

小林が腰を動かし始める。紫原のような絶対的な圧迫感はなく、ゆるやかな律動はほどよく氷室のアナルを刺激した。

「・・んっ・・」

固く口を結び、洩れそうになる声を堪える。ところが小林が氷室の足をさらに抱え上げたとき、ペニスの奥にある一点に衝撃が走った。

「ああ・・っ」

ビクンと体を揺らし、氷室が声を上げた。気付いた小林はそこをめがけて出し入れする。堪え切れない前立腺への刺激に、氷室は自由にならない腰を捩った。

「んっ・・あ・・あ・・っ・・やっ・・そこは・・っ」

「ここ、いいのか?」

「やめっ・・て・・くっ・・ああぁ・・っ」

「ばっか、声でけーよ」

「・・・っ・・・」

氷室は両手で自らの口を覆った。氷室の声に刺激され、小林の腰の動きが早くなる。はっ、はっ、と短い声を上げながら、隣室の同級生が人の尻に硬くなったペニスを埋め、興奮した様子で腰を動かしている。そしてその行為にこんなにも快感を得ている自分がいる。もう、何もかもがどうでもいい。

小林の短い声が止み、尻の中の圧迫感が弱くなる。小林は達して硬さを失ったペニスをずるりと引き抜いた。

「・・ん・・っ」

圧迫感から喪失感への変化に、氷室は思わず声を洩らす。小林は射精して精液の溜まったコンドームをペニスから引き抜いた。

「やっべぇよ氷室、気持ちいーんだけど」

返す言葉もなく、両腕で顔を隠してぐったりと横たわる氷室の体の上に、小林は外したコンドームを逆さまに摘まんで掲げた。白く濁った液体が、ポタポタと氷室の腹の上に滴り落ちる。

「お前さぁ、アレだな」

淫乱ってやつ?と言いながら小林はベッドから下りた。椅子に掛かっていたタオルで自身のペニスを拭い、下着とジャージを穿くと、いまだに床の上で動いているローターを拾ってベッドに腰掛けた。

「オレ、飯食いに行くけど一緒に行くか?まだ食ってないだろ?もっともオレはお前に舌噛まれて不味い飯しか食えねーけど」

氷室は力なく、首を僅かに横に振る。ふぅん、そう、と答えると、小林は顔を隠している氷室の手を掴んで引いた。

「じゃあ飯も食わずに自分でイっとけよ」

掴んだ手で氷室自身のペニスを握らせてから、ごろりと体を横向きに転がして、動いたままのローターを強引に氷室の尻に突っ込んだ。う、という呻きを上げて、氷室は体を縮める。そこまで乱暴に扱っておきながら、最後に小林は氷室の髪をやさしく撫で、耳元に顔を近付けた。

「また、しような」

そうひと言囁いて、小林は入って来たときに後ろ手で閉めた鍵を開け、部屋を出て行った。





また勃ってしまったペニスを握らされ、動くローターを尻に突っ込まれたまま氷室は放置された。ローターを抜く気力も、握った手を離す気力も持ち合わせていなかったが、ここでまた誰かがやって来たら大変なことになる。氷室は気力を振り絞り、力の入らない手で尻からローターを引き抜き、いつの間にか脱がされていた下着を身に着ける。

アツシ・・ごめん・・アツシ・・・。

今頃きっと穏やかな顔で笑っているであろう恋人に、心の中でどんなに謝ってみても、起こってしまった事実は消えることがない。


「会いたい・・・」


無意識に呟いたが、本当は会いたくない。明日の午後には帰ってくるはずの彼に、どんな顔をして会えばいいのかわからない。部を守るため、という言い訳はもはや通用しなくなった。自分は紫原以外の男の手でイかされ、挿れられて、感じて声を上げたのだ。


今は何も考えたくない。
天井を見上げた氷室の瞳から、涙が零れた。










end


 

 

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