10 あけゆく空の色





漆黒の闇が藍に変わり、それはやがて、青へと変化する。その後は瞬く間に青が薄くなり、気が付けば、空は白かった。
カーテンの隙間から空を眺めていた氷室は振り返り、ベッドに眠る劉を見つめた。劉はこちらに背を向けて横たわり、小さな寝息を立てている。

劉のベッドで一夜を共にした。何度も、何度もキスをした。互いの舌を絡めあうような、キスもした。劉の唇が、唇以外の耳の下とか、首筋とか、鎖骨とか、そういった箇所に落ちる度、体がゾクゾクと疼いた。耳朶を唇で甘く噛まれたとき、自分でも思いもよらない感じた風な声が出てしまって、そうしたら劉は「すまない」と言ってそれきり触れるのを止めた。

止めるなよ、という声が喉元まで出かかったが、言えなかった。そのまま続けて欲しいという気持ちを、心の奥にある何かが邪魔をした。欲を制御するそれはたぶん、プライドだ。当たり前のように受け身になっていたが、そもそも二人とも男なのだ。じゃあ劉をどうにかしたいのかといえば、それは考えたことがなかった。逆に劉にどうにかされたいのかといえば、考えるだけで体の中心が疼いた。だからきっと、嫌なわけではない。ただ、今後、劉がその先を求めて来たとき、オレは男のプライドを捨てられるだろうか。

ん・・と小さな声を洩らし、劉が寝返りを打った。氷室?と名を呼び枕元のスマホで時刻を確認すると、早いな今日は大雪アルか?とまだ眠たそうな口調で氷室をからかう。それは数時間前の行為が夢だったのではないかと思うような何気なさであったが、ああ、劉のこういうところも何か好きだな、と再認識する自分がいる。

劉はのっそりと大きな体を起こすと、人差し指を上に向けてちょいちょいと動かし氷室を呼んだ。氷室がベッドの横まで行くと劉は氷室の腕を掴んで引き、「…mornin' 」と言って頬に口付ける。

すべてはここから始まった。
けれど1日経った今、もう、頬へのキスで狼狽えることはない。


「違うだろ、劉」

「・・何が?」

氷室はベッドに乗り、疑問に首を傾げる劉に顔を近付ける。

mornin' ・・・劉」


ちゅ、っという音を立て、氷室は劉の唇に、口付けた。









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ここまでお読みくださりありがとうございました。
ひと月後の話となる「その後のふたり」がR18ページにございます。年齢的にOKな方で興味のある方は探してみてください。

 

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