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何がどうしてこうなったのか。
岡村は、自分一人でも狭すぎるベッドの壁側に横になった。

「狭いのは我慢せえよ。あと、くれぐれもベッドから落ちんようにな」

「大丈夫ですよ」

こうして寝ますから、と言って氷室はベッドの上で横になると、岡村に抱きつかんばかりに体を寄せてきた。

「何しとる・・っちゅーか、早よう着替えんかい。制服が皺くちゃになるじゃろが」

大き過ぎるであろうが、一応Tシャツとハーフパンツを貸してやったというのに、なぜだか氷室は制服のままだ。寄せてきた体を引き剥がし、大きな手で腕を掴んで体を起こすよう促すと、氷室は渋々と起き上がった。が、ベッドから下りることなく岡村が横たわる脇で正座をしている。

「何やっとんじゃ・・・」

岡村が呆れた風に大きなため息を吐いて体を起こすと、今度は氷室が岡村の腕を掴んだ。掴まれた腕は、氷室の胸元へと運ばれる。

「着替えさせてくださいよ、岡村さん・・」

「あ”?」

この後輩は一体何を言ってるんだろうか。いよいよ氷室の言動に不信感が湧いてきて、岡村は辺りをぐるりと見回したが、部屋には何も変わった様子はない。

「どうしました?」

「いや、のう、氷室。もしやこれ、劉や福井あたりと仕組んだ手の込んだイタズラじゃあるまいな」

「イタズラ?」

「人の知らんうちにどこかにカメラ仕掛けてあるとか、あと・・何じゃアレ・・ボイスなんたら・・」

「ボイスレコーダー?」

「そう、それじゃ、そんなん仕掛けとるとか・・」

「ひどいな・・劉や福井さんならともかく、オレは岡村さんにそんなことしませんよ」

言いながら氷室は、腕を掴んだのと反対の手で岡村の手を甲側からそっと握り、その手を自分のネクタイに掛けさせた。考えてみればそうだ。氷室は自分だけでなく、すべての先輩に対して敬意を払っていた。その氷室がそんなイタズラに加担するわけがない。だがそれならば、今のこのイタズラにしては度が過ぎた言動は何なのだろう。氷室の手が、岡村の手を使ってネクタイを引き下ろす。これがイタズラでないのなら――。また、体がゾクリと震えた。

気が付くと、氷室の両手はベッドの上にだらりと下ろされていて、岡村は自らの手で氷室のネクタイを外していた。

ネクタイが襟から抜けるときのシュッという音が懐かしい。ネクタイを床に放ると、氷室が次は?と言ってワイシャツの胸元を指先で開いて見せた。その表情は、単なる微笑みとは違う、何かいやらしい気持ちにさせる顔だった。氷室の顔が整っていることは、嫌というほど思い知らされている。もしも高校時代に”学校一のイケメンは?”というアンケートを実施したら、断トツで一位になったことだろう。いや、イケメンというよりも”美形”とか”美人”いう類いらしい。女子がそんな話をしていたのを聞いたことがある。女に美しいと形容される氷室に自分は今、何をしているのだろう。岡村の大きな手が氷室のシャツの小さなボタンを不器用に外していく。氷室は自分で上着のボタンを外している。

「手・・震えてるんですか」

「ボタンが小っちゃ過ぎるんじゃ」

「そうですね」

ふふ、と笑った氷室の顔は、羨ましくもならないほどに綺麗だと思った。ボタンをすべて外し終えると首から腹までが露わになったが、狼狽えることは何もない。氷室の肌など、かつて部室での着替えで毎日のように見ていたはずだ。氷室がまた、今度は岡村の両手を掴んだ。その手は、前開きになったシャツの左右を握らせる。

「脱がせて・・」

誘うように、氷室が目を細める。目が合った瞬間、岡村は堪らずシャツを左右に開いた。上着とともに、シャツが肩からするりと落ちる。氷室は袖で止まった上着とワイシャツから腕を抜いた。鍛えられてはいるが細身の上半身が露わになる。何度も目にしていたはずの氷室の体は、岡村の目にまるで違うもののように映った。

岡村さん、と呼ぶ声がしたかと思うと、氷室は今露わになった胸を岡村の顔に押し付けて抱きついてきた。岡村が氷室の胸に顔を埋めるような体勢だ。

「うお・・っ、ちょ・・っ、待・・な、何しとるんじゃ・・!!!」

思わず大声を上げた岡村の唇は、氷室の唇に塞がれた。

「!!!!????」

驚きのあまり体が硬直して動かない。岡村が動かなくなったのを見計らって、氷室は唇を離した。

「そんな大きな声出したらご近所迷惑じゃないですか」

「い、いや、そーゆーことよりまずだな・・・」

「ずっと、こうしたかったんです」

「・・・は?」

「すみません・・」

そう言って詫びた氷室は照れるどころかジッと岡村の顔を見つめてくる。本当にもう、何が何だかわからない。そうだこれはきっと夢だ。夢だから同性の後輩とおかしなことになってもいつかは覚めるだろう。ああ、ホントにもう――。

「好きにせい」

思っていたことがどうやら口に出てしまったようだ。ふ、と口の端を上げた氷室の笑い顔はさっきまでと違う人間のように思えた。氷室がゆっくりと顔を近付けてくる。その綺麗な顔立ちに、頭がクラクラしそうだ。再び唇を塞がれると、体の芯が疼いた。

「髭・・痛いですね」

顔を離した氷室は、次に岡村の割れた顎に頬ずりをし始めた。

「毎朝剃っとるんじゃが・・すまんのう」

「いえ・・気持ちいいです」

氷室は胡坐をかいた岡村の前に膝立ちになり、さっきと同様に岡村の顔に胸を押し付けて抱きしめた。今度は岡村も仰天することなく、それを受け入れる。氷室は自分の胸を岡村の顎に擦り付けてきた。

「・・ん・・っ」

乳首に髭が当たるのがどうやら快感らしい。ゆっくりと胸を上下させる氷室が短い声を上げる度、岡村の体の中心は熱く、硬くなる。生え初めの髭に何度も擦り付けたせいで、氷室の乳首は赤みを帯びて膨らんできた。

「もうよさんかい、痛いじゃろうが」

岡村は顎を引き、その代わり、氷室の胸に唇を寄せた。ぷっくりと膨らんだ乳首を口に含むと、「あぁ・・っ」という声を上げて氷室は仰け反った。もう片方の乳首を指先で摘まみ、口に含んだ乳首を舌先で弄ると、氷室はあっ、あっという短い喘ぎを何度も洩らした。

「岡村さんも・・」

氷室は体を離し、岡村の前にぺたりと座り込むと、岡村の長袖Tシャツの裾を胸の上まで一気にたくし上げた。

「お、おいおい・・」

焦る岡村は胡坐をかいたままじりじりと壁際まで後退する。後ずさる岡村を追い詰めるかのように氷室は岡村に近付き、露わになった胸元をやんわりと撫でた。

「け・・毛が生えとって気持ち悪いじゃろ?」

確かに、岡村の胸には肌を覆うほどの胸毛が生えている。氷室は岡村の顔を見上げてニッコリと笑い、毛の生えた胸元に顔を寄せ、頬ずりをした。

「オレ、結構好きなんです、こういうの」

「そ、そうなんか?」

「自分で・・持っててもらえますか?」

両手でシャツを上げていると体勢が悪いのか、氷室は岡村に自分でシャツの裾を持つよう促した。岡村が両肩のあたりまでたくし上げられた自身のシャツの裾を持つと、氷室はふふふ、と笑った。

「やらしいなぁ、岡村さん」

「は?な、何がじゃ?」

「その恰好、自分からして欲しがってるみたいですよ」

ベッドに両手をついて、氷室がまた、顔を寄せてくる。再び胸毛の上で頬ずりを始めたが、毛の生えていない部分を見つけ、氷室はそれをそっと口に含んだ。

「おっ・・うお・・っ!!!」

岡村の大きな体がビクンと揺れる。その反応に、氷室は嬉しそうに岡村の乳首への愛撫を開始した。

「お・・おお・・っ、ひ、氷室っ!マズイじゃろ・・これは、マズイじゃろ・・っ」

舌先で突く度、歯を立てる度、岡村の体はビクビクと大きく反応を示す。氷室の手が、岡村の腹筋のあたりを撫で始めた。かと思うとその手はゆっくりと下へと移動して、やがて股間へと辿り着いた。

「ひっ、ひっ・・氷室!お前、何しとるか・・っ!!」

「こんなに大きくしておいて何するもないでしょう?」

「どうする・・つもりじゃ」

「大丈夫ですよ、絶対気持ちよくしてあげますから」

おっきい・・と嬉しそうに呟いた氷室は、岡村のペニスをハーフパンツの上から形に沿って握った。

「お、おい・・やめろ・・っやめるんじゃ・・っ」

「そう思うならオレを退ければいいじゃないですか。体格差からいっても簡単なことでしょう?」

「・・・く・・っ」

そうしたいはずなのに、体が動かない。だがこのままでは大変なことになる。そのことは、わかっているはずなのに。

「一緒に気持ちよくなりましょうよ。オレももう我慢できません・・」

氷室は岡村の股間から手を離し、自身の制服のズボンのベルトに手をかけた。カチャカチャと音を立て、ベルトを外し、ファスナーを下ろす。他人の勃起したペニスなど当然ながら見たことがない。

「待てっ、氷室・・待つんじゃ・・!!!」

氷室の下着の中から何かが見えた。

気がした――――。






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