同性の後輩-交配- ** 床に座って開いた足の間に、四つん這いになった氷室が顔を埋める。 「ん‥…っ、く……ぁ、あっ、やば、やばいって、氷室……っ」 大事な部分を咥えられて、福井は思わず氷室の顔を手のひらで制止した。いまだかつて経験したことのない快感だった。自分の手では絶対に得られない、ペニスを直に含む口腔と舌の感触。氷室が窄めた口を引く度にぞくぞくと熱が集まってきて、そのまま口内でイってしまいそうになるのを福井は何とか堪えた。 「やっべぇって、出ちまう……」 「それは困ります」 ちゅる、と吸うように福井のペニスから口を離した氷室が蕩けた瞳で福井を見上げる。こんな表情を持っている奴だなんて、思いもしなかった。福井の知っている氷室は、人あたりの良い穏やかな普段の顔か、バスケに入れ込んでいる時の熱血漢の顔か、どちらかだ。 「…ん……っ」 という声を洩らし、氷室は自身の尻から指を引き抜いた。プラスチックボトルに入った透明の粘液を纏った指で自ら入口を解し終えると、次に氷室は小さな正方形の袋を開けて、中身を取り出した。 「着けてあげますね」 薄いピンク色のゴムを勃起した福井のペニスの先端に当て、まずは亀頭の下まで被せ、あとは陰茎に沿ってくるくると下ろしていく。福井はコンドームを着けること自体が初めてで、氷室の慣れた手付きにされるがままだ。 「いつもこんなもん持ち歩いてんのかよ」 率直な疑問だ。だってここは、学校だ。 「今日はたまたまです」 と答えて氷室は苦笑いをして見せる。本当か嘘かなんて、こいつの言葉はもう何も信じられなくなっていたが、それすら、どうでもよくなりつつあった。 「挿れて……ください」 氷室はズボンと下着を膝まで下ろした格好で、自ら四つん這いになって福井に尻を突き出した。色は白いがやわらかみに欠ける尻だ。それでも、肉の薄いそこを両手で掴んだとき、生肌の感触にぶるっと体が震えた。触れた手に少し力を込めて双丘を割ると、奥に小さな入口が見えた。 「先を入口に当てて―――」 どう考えても入るとは思えない窄まった入口に戸惑いながらも、言われたとおりに先端を宛がう。 「あとは挿れたい、と思えば自然と入っていくはずです」 「んな簡単に……」 「大丈夫です、入ってしまえばオレも、福井さんも、きっと気持ち良くなりますから」 挿れたい、と思ってしまった。
何だ、これ―――。
先端が入るとそれに続くようにずるずると陰茎までが奥に埋まっていく。全てが入りきったところで、どうしたものかと福井は動きを止めた。 「福井さん……動いて……」 「お……っうぉ……っ」 きゅ、と尻に力が込められて、ペニスが締め付けられる。そんなことだけでも、達してしまいそうになる。福井はゆっくりと、腰を前後に動かし始めた。 「あぁ……っ、ん、もっと……もっと、動いて……っ」
何なんだ、これ―――。
「ひぁ……ああ、んっ……んんあ、あ、あん……っ」 「……くっ……う、うあ……っ、や、べぇ……っ」 纏わりついてくる肉の感触。手で扱くのとは確実に違う他者による締め付けに、福井の口から思わず声が上がる。明らかに女のものではない同性の後輩の喘ぎに、ひどく興奮している自分がいる。 「やっべぇよ、氷室……っ」 「あ……は、ぁ……ああっ……福井、さん……っ」 「気持ち……良過ぎだろ……っ」 気が付けば夢中で腰を打ち付けていた。
それ以来、何度か体を重ねた。 特に親しいわけではなかった先輩と後輩が寮の部屋を行き来するには、それなりの理由が必要だった。 帰国子女である氷室に受験生である福井が英語を教わる体であったり、無事に受験が終わった後は、元副主将と新主将が男子バスケ部について語らう体であったり。都合の良い理由ではあったが、その裏に隠された真実に気付く者は誰もいなかった。 片手の指で足りなくなるくらいに回数を重ねた頃、福井は陽泉高校を卒業して、寮を出た。特別な言葉は何もなかった。互いを名残惜しむこともなかった。最後の別れの時でさえ、他の先輩・後輩と何ら変わりのない激励の言葉を交わし合ったに過ぎず、二人の関係は、そこであっさりと終わりを遂げた。
もしかしたらあの当時、他にも氷室と肉体関係を持つ男が学校内にいたのではないだろうか、とか。 何となく思うことはあっても、今となってはもう、真実を知ることもない。
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