栗の花の咲く頃 3






「すみません、黄瀬くん」

部室のドアの前から、聞き慣れた声が聞こえた。

暗がりの中でその顔まではまだはっきりと見えなかったが、声で誰だかはわかる。

「いや、いいっスけど・・」

ドアの前に辿り着くと、ようやく顔がはっきりと見えた。バッグを肩に掛け、黒子はドアに寄り掛かることもせず、直立不動のままに立ち尽くしていた。黄瀬は桃井から預かった部室の鍵を右手に持ち、左手でドアノブに触れて、鍵穴を探る。黒子っちが忘れ物なんてめずらしいっスね、と声を掛けると、そうでもないですよ、と黒子はいつもの平坦な声で返した。

左手の親指で探り当てた鍵穴に顔を近付け、鍵を差し込んで回すと、ガチャ、という音を立てて鍵は開錠された。黄瀬はドアノブを捻ってドアを開け、中には入らずに入口からすぐの壁際にある部屋の電気のスイッチを入れる。数本の長い蛍光灯がチカチカと小さな音を立てながら点くと、ついさっきまで黄瀬と桃井がふしだらな行為に没頭していた部室の内部が白い明かりに照らし出された。

「早く忘れ物取ってくるっスよ」

黄瀬が黒子を促すと、黒子は「はい」と返事をして部室の中に入って行った。ドアが閉まらないように手で押さえ、黄瀬はドアの外で中の様子を窺いながら、黒子を待った。黒子は自分のロッカーにすぐには向かわず、室内をキョロキョロと見回している。証拠になるものは何も残していないはずだが、できればそんな風に見回すのはやめて欲しい。

「何してるんスか、黒子っち」

少し急かすような口調で黄瀬が黒子を呼ぶと、「ああ、いえ」とだけ答えて、黒子はようやく自分のロッカーを開けた。中から取り出したのは、バンダナの包みだ。おそらく中は弁当箱だろう。なんだ・・と、黄瀬は小さな息を吐く。

「弁当箱っスか?」

「はい。これを忘れると大変なことになります」

「大変なこと?」

「一週間お弁当を作ってもらえなくなります」

「マジっスか」

「はい。しかもその間の学食代は自分の小遣いからになります」

「そりゃ・・忘れらんないっスね」

「ええ、だからさっき一度取りに来たんですけど、入れる雰囲気ではなかったので・・・」

「・・・・・・・!!」

バレている!?

黄瀬の心臓は、バクバクという音が耳の奥に響くほど大きく脈を打ち始めた。咄嗟の言葉が出てこない。取りに来たんだけど、何だというのだろう。黒子は何に、どこまで気付いたのだろう。黄瀬は一瞬だけ目を見開いたが、すぐさま元の顔に戻った。モデルの仕事で表情を自在に変えることには慣れている。平静を装っている自分は、上手くできているだろうか。仮に中の様子を悟られたのだとしても、行為を直接見られたわけではない。何とかシラを切り通すことはできないだろうか。

「黄瀬くん」

「・・・何スか」

「中に、入りませんか?」

「・・・・・・」

まったく上手くできていなかったと、思い知らされた。
黄瀬は観念をして、部室に足を踏み入れドアから手を離した。押さえのなくなったドアは自然に動きだし、やがて、ガチャ、と音を立てて閉まった。


「もう歩道橋のあたりまで行ってたんですけど――」

黒子が話し始めたので、黄瀬はバッグをベンチに放るように置いて、その横にドサッと腰を下ろした。無言のままのその様は少し不貞腐れているようにも見えたが、黒子は構わずに続ける。

「――弁当箱を忘れたことに気付いて、戻ることにしたんです。鍵当番が誰か知らなかったので、まだいるかどうかメールで聞くこともできなくて、とりあえず戻りました。遠目にも電気が消えていたので諦めようかと思ったんですけど、窓の鍵でも閉め忘れていないかと思って部室の前まで来たら、中に人の気配がしたので・・・」

ロッカーを背に立ったまま淡々と話していた黒子は、ここで言葉を濁した。それは言い難いだろう。黄瀬は大きなため息を吐いた。

「それで?」

「はい、それで、何となく中の事情は把握しました。誰だかわかりませんが、彼女を部室に連れ込んでいる部員がいるのかと思いました。でもまぁ事が済んだら出てくるだろうから、バッタリ会った振りをして鍵を開けてもらおうと思って校舎で待ち伏せをしていました」

「なんでそうしなかったんスか」

「黄瀬くん・・だったからです」

「・・・は?」

黄瀬は訝しげに黒子を見上げた。

「どういうこと?」

「その前に、質問してもいいですか?」

「質問にもよるっスけど・・」

「桃井さんとお付き合いしてるんですか?」

「してないっス」

「桃井さんはボクのことを好きなんだと思っていたんですけど」

「そうっスよ」

「じゃあ、どうしてあんなことを?」

黒子はまったく表情も声色も変えることなく問いかける。それはいつものことなのだが、今だけは少しイラついて、黄瀬は眉根を寄せた。

「黒子っちがハッキリしないからっスよ。あれだけ桃っちがアプローチ仕掛けてるのに乗るでもない、断るでもない、それにあんなことって、オレたちが何してたかその目で見たわけじゃないっスよね」

「見ていませんが、聞いてました」

「ちょっとふざけて騒いでただけっスよ」

「棒読みでもよければ声を再生しますが・・」

「・・・っ・・」

しらばっくれようと思ったら、墓穴を掘ってしまった。というか、再生だなんて悪趣味にも程がある。黄瀬はガックリと項垂れた。

「聞き耳でも立ててたんスか」

「人聞きが悪いですね。聞こえたんです」

「・・・で?黒子っちは何がしたいんスか?赤司っちにでも言い付けるつもり?」

「いえ・・・」

黒子は一度言葉を切った。
少しの沈黙に黄瀬が顔を上げると、黒子は黄瀬を見下ろしながら、淡々と言った。

「もし言うなら、青峰くん・・でしょうか」

「!!!???」

黄瀬の肩がビクッと揺れた。一体何を言っているのだろう?なぜここで、青峰が出てくるのだろう。わけがわからずに、黄瀬は黒子の顔を呆然と見上げる。

「なぜ青峰くん?と思いましたか?」

「・・・そりゃ・・」

「青峰くんは桃井さんのことが好きです。そして黄瀬くんキミは、青峰くんのことが好き・・ですよね?」

「!!??っ・・エスパーっスか!?」

「人間観察が得意なだけですよ」

「は・・・そっスか・・」

黄瀬は盛大なため息を吐いて、再び項垂れた。ここまで何もかも見透かされていると、言い訳や嘘を考えるのも取り越し苦労にしかならない気がする。何だかもうどうでもよくなって、黄瀬は自嘲気味な笑みを浮かべた。

「うん、そーっスよ。桃っちは黒子っちが好き、青峰っちは桃っちが好き、でもってオレは・・男の青峰っちのことが好き。気持ち悪いって罵ってもオカシイって笑ってもいいっス。ただ、お願い黒子っち・・青峰っちにだけは、言わないで欲しいっス・・」

「それは、桃井さんとの行為をですか?それともキミの気持ちをですか?」

「両方っス」

「・・・わかりました」

立ち尽くしていた黒子が、一歩、二歩と近付いてくる。黄瀬の前で足を止め、俯いたままの黄瀬の髪にふわりと手を乗せた。「誰にも言いませんよ」という慰めるような声に、黄瀬はゆっくりと顔を上げる。「その代わり・・」と、言葉を続けながら、黒子は身を屈めて黄瀬の顔を覗き込んだ。頭に乗せていた手をじわじわと下ろし、それは黄瀬の片頬を包んで止まった。

「その代わり、僕たちも秘密を作りましょう」

「・・・は?」

秘密?と問う間もなく、黄瀬の唇は黒子の唇によって塞がれた。驚きで、声も出ない。あまりにも唐突だが、あまりにも静かな口付けに、黄瀬は黒子を振り払うことが出来ず硬直した。暫し黄瀬の唇を塞いだやわらかな感触は、やはり、静かに離れていった。

「え・・っと、黒子・・っち?」

「黄瀬くんは青峰くんが好き、青峰くんは桃井さんが好き、桃井さんはボクが好き。そしてボクは黄瀬くん、キミのことが・・好きです」

「・・・・・・・はい?」

事の次第が理解できずに、黄瀬は半ば呆けた顔をして小首を傾げた。

「黄瀬くんが、好きです」

「あ、いや・・まったく初耳なんスけど・・」

「それは、初めて言いましたから」

照れることもなく、今の今までと同じ表情と口調でそんなことを言われても俄かには信じ難い。寧ろからかわれているのではないかとさえ思ってしまう。だがそれよりも今は、何よりも。

「てゆーか黒子っち、オレ・・ファーストキスだったんスけど・・・」

「えっ!?」

この部屋に入ってから初めて、黒子が感情のある声を上げた。

「あ、え、だって桃井さんとか取り巻きの女の子とか、黄瀬くんならそんなものはとっくかと・・・」

「桃っちとは恋愛感情があるわけじゃないんで、唇へのキスは何となくタブーなんスよ。取り巻きっていうか、彼女たちは論外。ヤる気も起きねーっス」

「それは・・申し訳ないことをしました」

「今さらしょーがないし、いいっスよ。男同士だし、ノーカンにするっス」

「・・ノーカン?」

突然口付けておきながら勝手な話だが、今の黄瀬の言葉は少々癇に障った。ノーカウントになどさせない、という思いが頭を擡げる。

「青峰くんだって男じゃないですか」

「・・・っ・・」

先ほどとは打って変わって、黒子は黄瀬のネクタイの結び目を掴んで持ち上げ、強引に口付けた。触れるだけではない、互いの唇が交わるように深い口付けだ。黄瀬は、失言に気付いた。


『なんでそうしなかったんスか?』

『黄瀬くん・・だったからです』


バッタリと会った振りをせず、わざわざメールをしてきた黒子。

どういうこと?と尋ねた言葉にまだ返事をもらっていなかったが、今、答えが出た。

からかわれているわけじゃない。

黒子は本当に自分のことが好きなのだと、黄瀬はようやく理解した。






***







毎日締めているネクタイを解くのは容易なことだった。黒子は掴んでいた黄瀬のネクタイをするりと解く。解いたネクタイを黄瀬が座るベンチの上に置くと、まずは白いカーディガンのボタンをすべて外し、続けてワイシャツのボタンを外し始めた。

「ねぇ黒子っち・・?」

「はい」

「何するつもりっスか?」

「何って、キミと桃井さんがしていたことですよ」

「オレ・・男っスよ?」

「何度も言わせないでください。青峰くんも男だと言いましたよね。そしてボクも男です」

「でもオレ・・青峰っちとえっちしたいとか考えたことないんスけど・・」

「ない、と言い切れますか?」

果たしてどうだったろう。

青峰のことが好きだと気付いたのは、1on1をしている最中、上手くなったんじゃねーのと言いながら頭をガシガシと撫でられたときだったと思う。その瞬間は単純に褒められて嬉しかったのだけれど、頭の天辺に残ってなかなか消えない青峰の手の感触に何だかドキドキして、胸が締め付けられるくらいドキドキして、そのときに初めてそれは恋愛感情なのだと気付いた。まだ、青峰がバスケを楽しんでいた頃のことだ。その後も、試合に勝って肩を組まれたときとか、不意に顔が近付いたときとか、食べかけのアイスを横からかじられたときとか、何度もドキドキさせられてきた。顔が近付いたときのことを思い出して、唇が触れる・・というのは想像したことがある。けれどそれだけだ。桃井にしているように青峰の体に何かしたいかといえばそんなことは思わなかったし、絶対にあり得ないが、逆に青峰が自分に触れてきたとしたら――。

黄瀬の思考が一瞬止まった。
もしも青峰が今の黒子のように自分の体に触れてきたとしたら、果たして拒んだだろうか?

「青峰くんにされているのだと思ってみてください」

「!?」

人の心を見透かしたかのような言葉に黄瀬はハッとして黒子を見た。シャツのボタンはすべて外されている。男同士で、何をどこまでしようというのか。想像が追いつかない。

「えっと・・どー見ても黒子っちなんスけど・・」

「目を閉じていればいいですよ」

「あんたは・・それでいいんスか?」

怪訝そうな表情で問う黄瀬に、黒子はふと笑った。
ふと笑って黄瀬の前から離れると、部屋の出口へと向かい、内側からドアのカギをかける。

「どうせ心は手に入らないのですから、体だけでも十分です」

言いながら戻ってきた黒子は、もう一度、笑った。



再び、唇が塞がれた。
やわらかい。
触れて、押し付けて、少し離してまた、押し付けて。その繰り返しの、とてもやさしい口付けだ。そういえば、黒子は誰かとキスしたことはあるのだろうか。そんなことを思っていると、不意に唇が離れた。

「この姿勢は辛いです」

腰と背中を丸めて屈んでいた黒子は、一度背筋を伸ばした。それから、ベンチに足を開いて腰掛ける黄瀬の両足の間に膝をつき、黄瀬と向き合った。すると今度は黄瀬の方が高くなる。黒子は両腕を伸ばし、黄瀬の首の後ろに手を回す。「届かないです、少し屈んでください」と勝手なお願いをしてみると、黄瀬は少し前のめりにその身を屈め、黒子に顔を近付けてきた。

「黒子っちは、誰かとキスしたことあるんスか?」

「いいえ、黄瀬くんが初めてです」

「ふぅん」

何を考えているのか、黄瀬は黒子の肩に額を乗せた。生乾きの髪から、シャンプーの香りがする。黒子は黄瀬の背中に腕を回して軽く抱き、甘い香りの髪の間から覗く耳に、唇を寄せた。耳たぶを唇で挟んでみると、黄瀬の肩がピクリと揺れた。舌で舐め、唾液で濡らしてから甘く歯噛みをすると、黄瀬は大袈裟に肩を竦めた。「くすぐってぇ・・」という小さな呟きが伏せた顔の下から聞こえる。もっと違う声が聞きたい、という欲求が、黒子の胸に渦巻く。

この行為を拒まない黄瀬の心は読めない。半ば脅しのようなものだったので、諦めているのかもしれない。心が手に入らないのだから体だけでも、というのは本音だ。けれど彼が拒まないのなら、せめてやさしく。一刻も早く忘れたい記憶にならないように、やさしくしようと思う。

耳たぶのすぐ下に口付けると、やはり黄瀬は肩を竦めた。首筋にキスを落とし、舌で舐め、耳たぶの下から肩口に向けて唇を這わせると、時おり「ふ・・」という声が黄瀬の口から漏れる。たまらない。黒子はぞくりと体を震わせた。

「黄瀬くん」

伏せた顔を覗き込み、黒子は黄瀬の顎に手を掛けて上向かせ、唇を重ねる。さっきまでと同様にやさしく口付けながらも、黒子は黄瀬の口内に舌を挿し入れてみた。瞬間、黄瀬の肩は小さく揺れたが、それも拒まれることはなかった。黄瀬は舌を引っ込めていたが、挿し入れた舌を動かしてしつこく誘うと、苦しくなったのか、黄瀬の舌が黒子の舌に触れた。逃がさないように、黒子は素早く舌を絡める。キスの仕方なんて知らなかったが、本能というのだろうか。それは条件反射的な行為だった。「ん・・っ」と、少し苦しげな声が重ねた唇の隙間から漏れる。二人は夢中で舌を絡め合った。人の唾液というのは、少し、甘いような気がした。

口付けを交わしながら、黒子は黄瀬の首筋に手を掛け、ワイシャツを開くように肩から落とした。シャツはカーディガンとともに前屈みになった黄瀬の背中のあたりで止まったが、両肩と胸が露わになる。黒子は黄瀬に口付けたまま、両手の指の背側で黄瀬の鎖骨から胸に向かって撫で下ろした。硬い胸板の上の小さな突起に両手が触れた瞬間、黄瀬は「うわっ」という声を上げ、唇を離した。屈めていた体を一層屈め、背中を丸めて黒子の手の侵入を阻む。

「どうしました?」

「や・・これはマジ無理っしょ・・」

「どうしてですか」

「メッチャくすぐったいっスよ!!」

「女性はそれを快感と思うんじゃないんですか?」

「だからオレ男だって――」

「もう少しだけ、我慢してみてください」

「えぇぇ〜〜・・っ?」

不満げに顔を歪めたが、黄瀬は仕方なさそうに体を起こした。するとカーディガンの重みでワイシャツごと背中から落ち、袖を除いた上半身がすべて露わになった。黄瀬はギュッと目を閉じて上を向く。来るなら来い、という体勢だ。そんな黄瀬が本当に可愛くて、黒子は思わず笑みを零す。両膝をついた黒子のちょうど目前にある黄瀬の両の乳首を、黒子は指先で摘まんでみた。

「・・っ・・ぅ」

声は堪えているが、やっぱり体を退こうとする黄瀬の背中に黒子は腕を回し、引き戻す。逃げないように背中を抱きながら、黒子は今触れた乳首の片方に顔を寄せ、唇で触れた。「ひゃ・・っ」という声が上がり、黄瀬は再度体を引こうとしたが、背中を抱かれた上に顔を埋められては避けようがない。さらに反応を楽しもうと黒子がそこを舌先でつつくと、黄瀬は「ふふっ・・」と笑うような声を漏らした。「や、も・・ほんっと、くすぐった・・っ」と、あくまでもくすぐったいと言い張るのは些か面白くない。少し硬くなった乳首に歯を立てて甘く噛み、唇と舌を使って吸い上げると、黄瀬は体を捩って逃れようとしながら、何度も小さな声を上げた。

「や・・っ黒子っち・・ヤバイよコレ、あっ・・ちょ、っマジ無理だ、って・・っ」

くすぐったいのか快感なのかもはやわからない。ただ、乳首に刺激が与えられるたびに下半身が疼き始めた。ついさっき桃井の中で達したばかりなのに、また、熱を帯びている。これ以上なにかされるのはマズイという思いと、桃井とでは味わえない何かがあるのではないかという思いが入り交じる。

「うぁっ・・・」

突然の衝撃に、黄瀬は少し大きな声を上げてしまった。黒子の手が股間に伸びてきたのだ。その手は勃ち上がりかけたものを包み込むようにズボン越しに握った。ビクン、と反応するのが布越しにもわかる。黒子は黄瀬の胸から顔を離し、ゆっくりと黄瀬の顔を見上げた。

「黒子っち・・・ぃ」

黄瀬も黒子を見下ろしている。この顔には見覚えがある。「黒子っち〜」とじゃれ付かれてこっ酷く邪険にしたときのひどく情けない顔だ。「オレどうすればいいんスか〜」。今はそんな顔をしている。

いわゆる美形と称される黄瀬の顔が情けなく歪むのを見るのは、黒子にとって快感だった。女子の前では決して、バスケ部の中でも認めた人間にしか見せないその顔を自分は見ることができるのだ。だからもっと、彼が認めた他の誰も見たことのない顔が見たい。

それはどうすれば見られるのか?

これから黄瀬にしようとしていることを想像し、黒子はふと口元を緩めた。






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